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アッヴィ/エーザイ 自己免疫疾患 アートプロジェクト 受賞作品について

■最優秀賞(1名)

志村沙織さんは2歳の時に若年性関節リウマチを発症し、以来、寛解と再燃を繰り返し、県立赤城養護学校高等部在籍中の平成15年4月に、再燃から髄膜炎を併発し17歳の若さで亡くなられました。
娘の沙織さんに代わって作品を応募された母親のかほるさんは、「娘の作ったものを何らかの形で遺したいと思っていました」と、応募の動機を語っています。今回の受賞は、沙織さんが病気と向き合い生きてきた証といえるのではないでしょうか。
受賞作品は、海、空、陸の生物がキャンバスいっぱいに明るくのびやかに描かれた油絵。審査員の東京女子医科大学附属膠原病リウマチ痛風センター 所長 山中寿先生は、「優しさと力強さが絶妙のバランスを取っている。そのためか心惹かれるものを感じる。遺作であることを別としても、感激した」と講評しています。

応募エピソード

積極的で前向きで、何事にも興味を持って取り組み、寛解時には病気であることを忘れてしまうような娘でした。入退院を繰り返す中、ベッド上で過ごす時間が長かったため、ジグゾーパズルやお絵かき、手芸が大好きでした。娘は、3人兄弟の真ん中(長女)で兄弟の中でも最も明るい性格で家の中での中心的存在でしたので、まさかそんな娘が病気になるとは思ってもいませんでした。応募のきっかけは、娘の残した絵にずっと額がなかったのがずっと気になっていて、額を購入した2ヵ月後に偶然にも、新聞で今回の募集の記事を拝見しました。応募する準備が整っているような気がして、応募してみようと思いました。
応募させていただいた油絵は高等部在籍時に作成したものです。
 

受賞のコメント

娘が病気になってからは寛解、再燃を繰り返し、亡くなった時も、まさか亡くなるとは思っておらず、家族全員とてもショックを受けました。娘が亡くなってからの10年間は、娘の事を話せないくらい落ち込んでいました。やっと、気持ちの整理ができて娘の部屋にある残された作品をじっくり見ることもできるようになりました。そして、偶然にも今回応募することができ、それだけでも満足しておりました。
受賞の連絡がきたときは大変驚き、今回の受賞を受けて、「他の患者さんたちは病気と闘っている状況なのに、最優秀賞をいただいて良いのだろうか」と思いました。このような形で賞をいただき、大変光栄です。13回忌となる今年、このような形で娘をしのぶことができ、心より感謝いたします。

■優秀賞(1名)

佐藤亜有子さんは1999年に全身性エリテマトーデス(SLE)を発症。その後もいくつもの疾患に見舞われ、長く闘病生活を送っておられます。 このアートプロジェクトには、「自身の病と向き合う大きなきっかけとなり、また、生きていく証となる」と思い、応募されました。受賞作品は、「剥製を覆う羽が折れて飛べない鳥が、沢山の宝物を胸に抱き、旅をするモノガタリ」を表現したオブジェ。
審査員の公益社団法人日本リウマチ友の会の長谷川三枝子会長は「命に係わる状態を通った中から『Shine』というファンタジーの世界を作り出した精神力、一所懸命なだけでなくユーモラスな作品として完成させている」と述べ、本作品の存在感と作品から発せられる「生きる力=輝き」が審査員の方々の共感を得て、【優秀賞】に選ばれました。

 

応募エピソード

16年前、SLEとAPSによる脳梗塞を発症し、1年間病院で過ごしました。退院後、暫く社会復帰がままならない状態で、不安や焦りが覆う事もありましたが、入院時に出会った白血病やパーキンソン病等あらゆる病の友人が、自らの命を懸けてキラキラ輝く心を与えてくれました。
昨年は、新たに心筋梗塞と大動脈炎症候群を発症し治療をスタート。今まで入退院を繰り返しながらも命に関わる症状は少なかったのですが、今回は思った以上に大変で、血栓、目眩、痺れなどと日々奮闘中。先が見えず落ち込む事もありますが、命続く限り色褪せず一度きりの人生を輝かせたい。今回の作品「Shine」は剥製を覆う羽が折れて飛べない鳥が、沢山の宝物を胸に抱き、旅をするモノガタリ。光と風を奏でファンタジックに大空を自由に駆け巡る。悲しみ苦しみ、多くの喜びを感じ未来へと響き繋げて生きてゆきたい。

 

受賞のコメント

芸術系の大学を出て、デザイン会社でグラフィックデザインの仕事をしていましたが、脳梗塞になった後、長期の自宅療養を余儀なくされ、働けなくなりました。でも、私にとって、創作することは自分の世界観を表現することであり、創っているときは、何も考えず集中できるので楽しく、平面、立体にとらわれず創作は続けてきました。外に出ていけない私にとって、作品を通して外の世界とコミュニケーションができることはとても大切なことです。創ることがしんどいと感じる時もありますが、今回受賞したことで、私の作品が良いと思ってもらえたことがとてもうれしくて、感激しています。

■審査員賞(3名)

仲田やす子さんは、平成13年に関節リウマチと診断され、治療を続けています。受賞作品の「リウマチかるた」は、リウマチのことをみんなで楽しみながら学べるカルタです。カルタの句を一枚一枚考え、絵を描き、カルタ一枚一枚がすべて手作り。箱や箱を結ぶひももすべて創作されました。審査員の美術家佐久間あすか氏は、「病気という苦しみを遊びという楽しみに変える発想が素晴らしい」と高く評価しています。

●応募エピソード

痛い痛いで明け暮れていた二年目の初夏、ちぎり絵教室での和紙。絵の具でもない、糸でもない、こんな美しい和紙で絵が描けたら。そう思ったらもうじっとしてはいられません。やっと歩けるようになったばかりだというのにイメージばかりが浮いて来て、またたく間に作品が出来ていきました。東京から父母の郷里に疎開し、主人の生家の生活等風習の異なる文化を絵にする時の胸の高まりは忘れません。私は家族が沢山の家が大好きで、餅搗きや田植えは楽しい行事。お餅を食べながら描いたりして。リウマチも上り下りはありましたけれど気がついた時、良くなっていました。病気を忘れるために、作品を作り続けています。
病歴や日記を読んで、今後の闘病や生きる励みに、カルタにしたらと思いつきました。子供の頃は、地理かるたや、いろはかるたで学んだが病気のかるたは勉強にはなるが上の句、下の句の言葉を探すのが大変でした。

緩解を目指し 光陰 幾星霜
 

受賞コメント

私の作品の意図を読みとっていただいたことに大変感激しています。まさか、受賞するとは思っていなかったのでとてもうれしいです。作品の製作中は、夜遅くまで夢中になり、楽しく作ることができました。このかるたを通して、病気で苦労したことを皆さんに知ってもらえたと思います。今まで、病気の人を対象としたコンテストなど目にすることがなかったので、今回のプロジェクトに感動しました。今後は、子供に「人生は楽しい」と思えるようなかるたを作っていきたいと思います。

池礼子さんは、幼児期から中学生までアトピーの治療を受けていましたが、高校生の時に尋常性乾癬、さらに、平成26年には、関節症乾癬と診断され、以来、専門外来に通院されています。作品は、メキシコの毛糸絵画「ネアリカ」の手法で描かれており、色鮮やかな毛糸で創られたいくつもの手が中央のハートに向かって差し伸べられています。審査員のTOKYO IBD副会長の石橋利恵氏は、「周囲の方々のサポートがあって病気と向かい合っているという気持ちを“バトン”というとらえ方をしていること、ハートをいくつもの手が支えているという」表現を評価しました。

応募エピソード

四箇所目の皮膚科で尋常乾癬であることが分かり、その後、乾癬の専門外来でお世話になっています。長年苦しんだ痛みの原因が分かり安心しました。日本の「ネアリカ」第一人者、アーティストのAKIRAさんに出会い、見よう見まねで昨年から「ネアリカ」の制作を始めました。現在5作品ほど「ネアリカ」を制作しています。今はいくつものバトンが私をここまで導いてくれたこと、同じ病気の方と出会えたこと、先生たちと出逢えたことを心から感謝しています。
 

受賞コメント

まさか、自分が入賞するとは思っていなかったのでとてもびっくりしています。今回の受賞がきっかけで、アーティストのAKIRAさんから連絡をいただき、今年12月に埼玉でネアリカ教室の講師務めることになりました。今後も、“想い”を作品にしていきたいと思います。

小塚榮子さんは昭和45年に関節リウマチを発症。「完治の見込みのない病気をいかに受け入れ、人生を過ごしてきたかを自分自身で見つめなおすため」に応募されました。審査員の自治医科大学皮膚科学講座大槻マミ太郎教授は、「ボールペンだけで表現されているのに“支える力”の尊さ、そして果てしない奥行きを感じる作品。寄り添う気持ちにあふれていて、とても共感できます」と講評しています

応募エピソード

20代で結婚、出産そして関節リウマチの発症と三年の間に私の人生は目まぐるしく変化しました。耳慣れない病名と子育てに追われる毎日を無我夢中で過ごしてきました。病気の進行に伴い身体に様々な障害を抱えるようになりましたが、家族やご近所さんの助けをいただきながら楽しい生活を送って来られました。63歳の時思いがけず、夫に先立たれ家に引きこもりがちな生活を送ることになりましたが、ある時、加齢による物忘れ以上の症状に気づき、もっと人と話をしなければと感じました。そこで町内で月に一度集まって楽しくおしゃべりをする会に参加させていただくことになり、その会でボールペン画を習う機会があり、やってみたら筆圧のない私の手でも描けることが分かりました。運動も家事すらも不十分な私にとって今日はこれをしようという目標を持って一日を過ごせるボールペン画と出会えたことは毎日を生きる励みとなっています。

受賞コメント

ボールペン画の先生から勧められて、今回作品を応募しました。今まで描いてきたボールペン画の中から「ほのぼの」とした作品が良いのではないかと先生からアドバイスいただき、作品を選びました。応募してから時間も経っていたのでまさか受賞するとは思っていなかったのでとてもびっくりしました。

■佳作(5名)

鼓野由奈さんは、2005年に若年性特発性関節炎、2014年には腸管型ベーチェット病と診断され闘病生活を送っています。「自分を表現してみたい」との強い想いから、このアートプロジェクトに応募されました。鼓野さんは、長い闘病生活の中から「普段の生活の中にある、食べられること、走れること、毎日家族と一緒にいられることは『当たり前』ではなく、とても幸運で幸せなことだということ」を学び、何度も挫けることがあったものの、病気とちゃんと向き合い前向きに考えられるようになったといいます。「これからも続く人生のキャンバスをたくさんの色で埋め尽くしていきたい」という思いが詰まった作品です。「真っ白な人生のキャンバスを日々紙で埋め尽くすという大胆な制作。病と闘いながらも制作を続けていく意欲に感動した」(佐久間あすか氏)との声がありました。

金子亜弥さんは小学4年生の時に強直性脊椎炎と診断され治療を続けています。受賞作品は、「病気を治療する薬は、体を守ってくれる輪のように感じます。治療薬が痛いものであり、苦しいものでも、私の体に効果があるのであれば『虹色の輪』のように感じます」という亜弥さんの思いを表現したものです。「強直性脊椎炎の治療は非常につらいものだと聞いています。その治療を『虹色の輪』『私の体を包み込んでくれる』と考えて乗り切ろうとする思考、そしてそれをアート作品として具現化する力に心動かされました。病といかに向きあっていくか、それを考えさせられる優れた作品だと感じます」(中村慎一郎氏)と感動と共感の声が審査員の方々から寄せられました。

2006年に関節リウマチと強皮症と診断され、病気の悪化で退職。生活が大きく変わり、「病気への不安、周りの人たちからの何気ない言葉が胸に突き刺さり、私の心も負の感情を抱くようになった」そうです。病気で退職したことをきっかけにカメラを持って出かけるようになり、カメラを通じていろんな人との出会いが生まれました。アートプロジェクトには、「病気によって得たものは、苦しみだけではないことを多くの人に知ってもらいたい」という思いから応募されました。「カメラをきっかけに広がった世界を強く感じさせてくれる」(日比紀文先生)と作者の思いが伝わってくる作品となっています。

1988年に関節リウマチと診断されました。その後27年を経て、「関節リウマチを受け止め、生きてこられたのは人に恵まれたおかげです。私の『おかげ様』を見ていただきたくて」応募を決意。27年の闘病の間には、ひどい痛みに耐え、8回も手術を受けましたが、現在はゆっくりと楽しい日々を送っています。受賞作品は、現在、夢中になっている陶芸作品。「周囲の人々に支えられてきたことへの感謝が温かみを持つ作品となっている」(長谷川三枝子氏)点等が評価され、佳作の受賞となりました。

紗和ちゃんは、2013年に若年性特発性関節炎の多関節型と診断されました。初めに右手の親指が大きく腫れ、脚も膝も曲げて歩くことが出来なくなりました。今も足は炎症が少し残っていますが、ゆっくりではあるものの走れるようになり、手は現在、すべて炎症が消え、最近ではボタンかけも自分でできるようになりました。母親のゆう子さんは、「おもしろそうだった事と、どれだけ娘ができるかやらせてみるちょうど良い機会」と思い、アートプロジェクトに応募されました。ゆう子さんは、作品のモチーフである “手”について、「何でもできるようになった手は、完治を目指す私たちの希望」であり、そして、その手で、希望のたくさん詰まった楽しい作品が出来上がりました。そして、作品に「きぼうの手」というタイトルをつけたそうです。

【参考】

<アッヴィ/エーザイ 自己免疫疾患 アートプロジェクト 募集概要>

◇募集内容

「テーマ:疾患と生きる。私の新たな可能性」に基づき、自己免疫疾患と向き合いながらも、患者さんご自身のPERSPECTIVES(視点、考え方、物の捉え方という意味)で捉えた心とカラダ、症状の改善などから見出した日々の喜び、新たな目標や希望などを自由に表現した作品と、作品の説明やエピソード(400字以内)を募集。
 

◇応募資格

自己免疫疾患群(関節リウマチ・若年性特発性関節炎・強直性脊椎炎・尋常性乾癬・関節症性乾癬・クローン病・潰瘍性大腸炎・腸管型ベーチェット病など)の疾患をもつ患者さん
 

◇応募期間

2015年2月15日(日)~2015年5月31日(日)消印有効
 

◇選考基準

作品のストーリー性、独創性
 

◇審査委員

東京女子医科大学附属 膠原病リウマチ痛風センター所長 山中 寿
自治医科大学 皮膚科学講座 教授 大槻 マミ太郎
北里大学 北里研究所病院炎症性腸疾患先進治療センターセンター長 日比 紀文
公益社団法人日本リウマチ友の会 会長 長谷川 三枝子
日本AS(強直性脊椎炎)友の会 事務局長
(順天堂大学医学部整形外科・スポーツ診療科 非常勤講師)
井上 久
若年性関節リウマチ親の会 あすなろ会 事務局担当理事 石垣 成子
NPO法人東京乾癬の会P-PAT 役員 中村 慎一郎
TOKYO IBD 副会長 石橋 利恵
美術家 佐久間 あすか


◇共催

アッヴィ合同会社、エーザイ株式会社