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結果を出し続けるベスト・チームの創り方、 今、求められるリーダーシップとは

バレーボール指導者の眞鍋政義様とバイオ医薬品企業AbbVie Inc.の日本法人アッヴィ合同会社(以下、アッヴィ)社長のジェームス・フェリシアーノの対談企画。バレーボール日本代表の監督に就任した眞鍋様の指導者としての観点と、フェリシアーノの企業経営者としての観点から、それぞれが描き、実践しているリーダーシップについて語り合いました。

――はじめに眞鍋様にお聞きします。ベストチームをつくる上で、監督として大切にされているリーダーシップのあり方について教えてください。

眞鍋政義様(以下、眞鍋):選手一人ひとりの個性を把握、尊重するために、私が一番に心がけているのはコミュニケーションです。バレーボール女子日本代表の選手の中心は20代、私は60代と世代差があります。その差を埋めるためにも、選手たちとはこまめにコミュニケーションを取るように努めています。

その際に、監督である私が心の扉を開かなければ、選手たちは決して心を開いてくれません。大上段に構えるのではなく、私の選手時代の失敗談などを交えながら、選手が話しやすいように工夫しています。

ジェームス・フェリシアーノ(以下、フェリシアーノ):なるほど。コミュニケーションは大事ですね。私たちアッヴィは、2025年までの中期計画で、「ベストカンパニーになる」ことを掲げています。そのためには、コミュニケート・コラボレート・セレブレート(Communicate, Collaborate, Celebrate)の“3Cs”のマインドセットを持つことが、欠かせないことを、常に社員に伝えています。
Communicateは、例えばメール一つでも送りっぱなしではなく、相手への気遣いや質・量ともに高いコミュニケーションを意識すること、Collaborateは、チームワークや社内・外のステークホルダーとの協働に極的に取り組むこと、そしてCelebrateの最も身近な例は、「ありがとう!」を伝えること、また「Good Job」「Good idea」など共に讃え合うことも、円滑で生産性の高い仕事を遂行する上でもとても重要です。

アッヴィでは、営業・マーケティング、開発や薬事、メディカル、管理部門など多種多様なチームがあり、役割もさまざまです。社長としての私の役割は、各専門分野のスペシャリストが円滑にコミュニケーションできる環境や仕組みになっているか、チーム間の連携は効果的に機能しているかをしっかりチェックすること。そしてチームの状況を俯瞰して、組織全体で3Csが体現できる環境を整えることだと考えています。

――より良いチームにするために、所属する選手や社員一人ひとりがリーダーシップを発揮する必要性についてはどのように考えていらっしゃいますか。

眞鍋:選手も一人ひとりにパッションがないと試合に勝つことはできません。パッションなしに成長なしです。日本女子バレーは、世界一身長が低いチームなので、その分、他国チームにはないストロングポイントの強化が必須です。

自動車メーカー・ホンダの創業者である本田宗一郎氏の名言に「失敗することを恐れるより、何もしないことを恐れろ」があります。それを命題にして非常識を常識に変える覚悟で個々のリーダーシップの発揮、チームリーダー育成に臨んでいます。

選手たちは子どもの頃からバレーボールをしてきた人が大半ですが、厳しく指導する先生や監督、コーチの元でプレーしてきた人も少なくありません。しかし、それだけでは日本代表は務まりません。選手一人ひとりが考え、想像してプレーする。練習も言われた通りにするのではなく、工夫しながらやっている選手の方が成長します。

バレーボールは対戦中に“間”があるスポーツです。約5秒間の間に、プラス思考の選手ほど力を発揮できます。プレッシャーがあればあるほど活躍する選手はなおさらです。私がコートに立つ6人を選ぶ時も、実力よりもプラス思考かどうかを重要視しているくらいです。

フェリシアーノ:ベストカンパニーを目指しているアッヴィでは、多くの患者さんに向けて早く確実に薬を届けることに日々注力しています。つまり、私たちの最大の使命は、一人でも多くの患者さんの笑顔に貢献し続けることです。そのために社員一人ひとりが、この使命に立ち返り、すべての行動や意思決定の中心に患者さんを据えています。それを実現するためには、一人ひとりの社員がリーダーシップを発揮して、自発的に考え行動する必要があります。リーダーシップとは、管理職の人間のみが発揮するものではなく、役割や役職にかかわらず、全員に求められるものです。

アッヴィでは、昨年より“I lead, You lead, We lead.”を合言葉に、リーダーシップの重要性と実践を促しています。I lead・・・これは、一人ひとりが、3Cs(Communicate, Collaborate, Celebrate)を体現しながら、自主的に責任感をもってゴールに進んでいくこと。You lead・・・仲間やチームメンバーが、3Csを体現しながら、同じゴールに向かって責任を果たすことを信じて、信頼をしていること。We lead・・・それができると、高いパフォーマンスを生むことのできるチームとなり、私たちの使命である「患者さんの笑顔に貢献していく」ことが、可能となります。

――選手や社員一人ひとりがリーダーシップを発揮するために、組織のトップとしてどのように個々の能力を最大限引き出し育成されているのでしょうか。

眞鍋:選手一人ひとりが日本代表として自覚、自立してもらうことが重要です。私の仕事は、選手と運営スタッフ含めた40~50人の、自覚や自立心を育み、モチベーションを上げていくことです。それが試合で結果を残す、目標達成の近道だと捉えています。「監督=モチベーター」です。個々のリーダーシップは、これらをいかに上げるかにかかっていると思います。

では具体的にどうするか。選手たちの日頃の変化に気づき、それを言葉にして伝えるようにしています。また、自分たちが努力してきたこと、それによって得られた成長や成果をしっかりと丁寧に振り返り、褒め、士気を上げる。時には、サプライズやエモーショナルな機会や場、ツールも使う工夫も、いろいろとしています。

フェリシアーノ:日頃のちょっとした気遣いで、選手が喜ぶ顔が目に浮かびますね。先ほども申し上げた通り、アッヴィでは約1800人の社員が、それぞれの事業や役割に全力で取り組んでいます。その中で、自分がどうありたいのか、どう成長していきたいのか、どんなキャリア・ジャーニーを目指したいのか、本人と上司が密にコミュニケーションをとり、意志を尊重しながら、その意志に沿った育成に努めています。また、グローバル人財の育成を視野に、海外のポジションへの短期アサイメントや、海外プロジェクトへの参加なども積極的に取り入れています。

アッヴィでは、「社員が成長できる文化を基盤として、最先端の科学技術と先進的な取り組みにより、患者さんの笑顔に貢献し続けるバイオ医薬品企業になる」をビジョンとして掲げています。「社員が成長できる文化・・・」を冒頭に据えている企業は少ないのではと思いますが、これも社員一人ひとりの成長に対するコミットメントの表れです。

さらに、I lead, You lead, We leadと3Csマインドセットを常に意識して、日々の活動に全力で取り組めるカルチャーを醸成していくことが重要だと考えています。それが結集すれば、アッヴィはきっとベストカンパニーになれると思います。そして、ベストカンパニーになることで、最終的にはより多くの待っている患者さんに、笑顔を届けることができると信じています。

――最後に眞鍋さんにお聞きします。スポーツ界の次世代のリーダー育成で工夫されていることがありましたら教えてください。

眞鍋:チームのキャプテン選びは、難しい仕事の一つです。実は、男子チームよりも女子チームの方がキャプテンにかかるウエイトが重いこともあって、私は、過去に失敗や苦しい経験がある選手をできる限り、歴代キャプテンにしてきました。

私はよくデータ分析に基づいて戦略を立てるのですが、キャプテン選びも日頃の選手とのコミュニケーションにもデータを活用しています。というのも、日本代表の監督就任初日に選手の個人面談を行った際に、面談時間にバラつきがあったようで、それが選手間に軋轢を生んでしまったことがありました。そこで、公平性を保つために日々の行動を数値化し、数値に基づいて話し合う優先順位を決めていました。

6人制のバレーボールは対戦中でもコート横まで監督が行って指示が出せます。この時、私はタブレット片手にリアルタイムの自チームと敵チームのデータを見せ、臨機応変に戦略を変えて結果を出してきました。

こういったアプローチの結果もあって、私のデータ分析を選手たちも信頼してくれ、コミュニケーションや、選手のモチベーションアップにも欠かせないものとなっていると言えます。
リーダーシップは、決してリーダーだけが孤軍奮闘して発揮できるものではありません。互いの信頼関係あってこそ。私は、この信頼関係をこれからも大切にして結果を出し続けていきたいと思います。そして、次のリーダーの育成にも挑戦していきたいです。

フェリシアーノ:スポーツの世界でも私たちのような企業活動においても、リーダーシップや、一人ひとりの能力を最大化し育成していくことの重要性は共通ですね。これからも、全日本バレーボールを応援しています。今日はありがとうございました。