タンパク質分解の可能性

アッヴィのサイエンティストたちは、細胞のタンパク質分解システムを占拠することで、難病治療に新たな可能性を開こうとしています。

左から、アニル・バスデバン、ビオレッタ・マリン、ジャスティン・レイツマ

タンパク質分解の新しいアプローチに取り組んでいるアッヴィ創薬グループのメンバー

2019年7月25日に米国本社のホームページに掲載されたオリジナルテキストの日本語翻訳版です。

新しいアプローチには新しい言葉

新しい言葉を作ることは科学者の仕事ではありません。特に化学者や生物学者は、タンパク質、分子、ゲノムを中心とした専門用語にこだわりを持つものです。

しかし、アニル・バスデバン博士とアッヴィ創薬グループのチームは、皆さんが想像するような典型的な科学者ではありません。

彼らは新しい専門用語-degradomers-を生み出しただけでなく、タンパク質を分解するという新しいアプローチで、希少がんや免疫疾患、さらにはパーキンソン病やアルツハイマー病などの疾患を持つ患者さんをどうやったら助けることができるか、その研究に精力的に取り組んでいます。

degradomersは、細胞内タンパク質を分解する能力を持った分子であると、アッヴィのdegradomersに対するグローバルな取り組みの責任者であるバスデバン博士(創薬プラットフォームテクノロジー領域シニアディレクター)は説明します。

それは、タンパク質を代謝してダストシュート(ごみ捨て)に運ぶという体の自然なシステムを占拠する分子(degradomers)を創り出そうという新しいアプローチです。

科学者たちは長い間、細胞内のタンパク質に働きかけて病気を治療する、つまり特定の部位に薬剤を結合させてその機能を阻害するという方法に頼ってきました。

バスデバン博士は、タンパク質分解は全く異なる方法だと言います。システムから目的のタンパク質を分解するのです。degradomersは特定の部位だけでなくタンパク質のどこにでも付着できるため、この方法により、科学者たちはヒトのプロテオームの大部分を標的にすることができます。

タンパク質分解は、オンコロジー(がん)、免疫、神経などの疾患領域で、疾患に関連するタンパク質を選択的に除去できる可能性を持っていると、スティーブ・エルモア博士(創薬サイエンス&テクノロジー領域バイスプレジデント)は言います。

「標的タンパク質分解の可能性を利用することで、私たちのような科学者に、そして治療不可能と考えられている疾患を持つ人々に、まったく新しい世界が開かれます」(エルモア博士)

アッヴィの創薬科学者は、難病に対処するため、細胞のタンパク質を“占拠”する。左から、ジャスティン・レイツマ、ビオレッタ・マリン、アニル・バスデバン

発展する取り組み

タンパク質分解の可能性を知って、バスデバン博士のグループは、研究室で最初の実験を始めました。ビオレッタ・マリン博士(創薬プラットフォームテクノロジー領域シニアサイエンティスト)は、初期に同僚のアレクサンドラ・バランチャック博士と共にバスデバン博士のオフィスで、可能性のあるアプローチについてブレインストーミングをしたことを覚えています。

化学生物学者であるマリン博士は、化学物質の使用方法を突き詰めて考え、理論を生かして、タンパク質分解の「ルール」を導き出しました。

ジャスティン・ライツマ博士(創薬プラットフォームテクノロジー領域シニアサイエンティスト)を始め、専門家たちが研究に参加しました。テクノロジーを支える生物学を理解することが彼の仕事であり、占拠するのに最適なリガーゼ、あるいはタンパク質分解を媒介する酵素を特定するために2年間を費やしました。

「従来の方法が、ゲノムの約15%の疾患しか治療できないことと比較すると、この研究がいかに状況を変え得るかがわかり始めています。標的タンパク質分解は、医学の未来の一部を担うものだと思います」(ライツマン博士)

アッヴィのタンパク質分解に関わる研究は進行中であり、チームは治療困難な疾患と闘う人々の治療に貢献できる可能性に集中して取り組んでいます。

マリン博士は言います。「いつか私たちの研究が誰かの人生に変化をもたらせたらと思います」