発表者インタビュー
(プロフィール)
22歳で悪性リンパ腫と診断され、2003年より8カ月に渡り放射線と薬物療法を経験。
治療後、水泳インストラクターとして復帰。2020東京オリンピック大会では聖火ランナー(愛知県代表)としてがんと闘いながら生きる勇気や希望を伝えた。トライアスロンや講演活動などを通じ、がんと運動に関する情報発信をおこなっている。2017年より代表を務めるボランティア団体「LIVESTRONG(リブストロング)」では、がんサバイバーを含め医療関係者など、がんの種類や垣根をこえたマラソン会やお茶会などの交流会を企画し活動中。
世界中でコロナ禍への不安がつのるなか、がんに加えてコロナと闘いながら、今そこに生きていること自体が素晴らしく奇跡です。一日一日今この瞬間を楽しもうとする感覚を大事にしてみませんか? 結果、楽しめなかったとしても何かしてみようと思った自分を誇らしく思えるはずです。
コロナ禍がはじまり、私もこの先を生きていけるか? と不安でした。でも、自分が感染するかもしれないと思ったときと、がん治療が始まったときの感覚は未来が見えない、今の状況が分からないという面で、感覚が似ていることに気付いて、ふっと気が晴れたのです。
水泳のインストラクターだった私は、治療をして生き延びることができたとしても水泳はもうできないかもしれないという絶望のなかにいました。そのときに励まされたのが、がん治療から復帰した米国の自転車選手によって書かれた本※です。そして今度は、私が希望を必要としている人に勇気を伝えていけたらいいなと思うようになったことが一つ目の原動力です。
二つ目は、口から弱音が出そうな私を、どうにか引っ張ってくれるもう一人の自分を感じるということです。私の場合、その瞬間の考えかたや感じかたをノートに書き出します。不安な感情を置き去りにすると、それに飲み込まれてしまう気がするのです。そんな正直な私をつづったノートは今、人生が確かに続いているということを物語ってくれます。
がんと闘っている人にとって未来を見ようと思うのは、すごく勇気のいることです。だから、今、がんと向き合っているあなたがそう思えたのなら、自分を誇らしく思ってほしい。今の自分は偉いとか楽しんでいるとか、自分自身を感じてあげる心をもつと気持ちの整理にもつながると信じています。
東京オリンピックの聖火ランナーでは、がんで亡くなった友人の想いを考えながら走りました。
「苦しい」や「つらい」というより、その人が何を感じていたかを。今、私がボランティア活動をしているLIVESTRONG(リブストロング)という団体でも、その人が何を感じているのか? ということを大切にしています。
※ランス・アームストロング著『ただマイヨ・ジョーヌのためでなく』(講談社文庫)
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